世界最大の旅行プラットフォーム「Tripadvisor®」(トリップアドバイザー、本社:マサチューセッツ州ニーダム、 NASDAQ:TRIP、CEO:ステファン・カウファー、日本語版サイト: www.tripadvisor.jp) は、観光行政関係者、自治 体、地域づくり法人(DMO)、旅行会社等観光事業者を対象にオンラインセミナー「The Future of Japan Tourism ~ウィズ・ポストコロナ時代の日本の旅行業~」を 2022 年 3 月 15 日(火)に開催いたしました。
コロナ禍 3 年目の今、新型コロナウイルス感染症のワクチン追加接種が浸透し、世界および日本の消費者の旅 行意欲は、非常に高まってきています。旅行再開に向けた旅行需要回復の兆し、消費者動向の行方など海外・国 内の旅行動向を読み解くため、日本の旅行業界を代表する方々にご登壇をいただきました。本オンラインセミナ ーでは、マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー 久家 紀子氏およびスティーブ・サクソン氏による「旅行・観 光事業における最新トレンド、その意味合い」、独立行政法人国際観光振興機構 理事長代理 吉田 晶子氏による 「ポストコロナの日本のインバウンド観光」、公益社団法人日本観光振興協会 理事長久保田穣氏による「コロナ 禍での観光の未来を考える~長期化するコロナとの戦いを通じて~」、日本航空株式会社 CX データマーケティン グ部 部長 光益彰氏による「旅が持つ変革と回復の力」、トリップアドバイザー株式会社 アカウントエグゼクティブ 中川 聡美による「世界・日本の旅行トレンド・インサイト」、そしてイーツーリズム・フロンティアズ 創業者兼 CEO ダ ミアン・クック氏とトリップアドバイザー株式会社 アジア太平洋地域メディアパートナーシップ統括責任者 サラ・マ シュースがディスカッションを行いながら、日本の旅行市場の復活について語りました。 本レポートでは、当日、講演者が発表した興味深いインサイトや動向をご紹介いたします。
■主催者挨拶
トリップアドバイザー株式会社 最高商務責任者カニカ・ソニ
パンデミックは、旅行という単純な行動がいかに重要で、豊かなものであるかを明らかにしました。私達は、新型コ ロナウイルス感染症の影響を引き続き受けていますが、世界は再び開かれ、旅行者は失われた時間を取り戻そ うと動き始めています。日本は、旅行業界の復活に向けて重要な役割を果たしています。世界で最も代表的な渡 航先の1つであり、アジア太平洋地域の観光を牽引する主要な旅行先です。世界的にも、地域的にも魅力溢れる 日本は、トリップアドバイザーにとっても重要です。数億人におよぶ旅行者は、海外旅行をしたいという思いでトリ ップアドバイザーのウェブサイトを訪れ、日本のどこに滞在し、どこで遊び、どこで食事をするか、楽しみながら情 報収集を行っています。
日本を拠点とする専任チームが地方自治体・DMO、旅行業界を中心とする事業者との関係を構築し、旅行意欲 の高いユーザーとつながり、様々なソリューションを提供しています。本オンラインセミナーでは、世界・日本の旅 行動向と日本の消費者の関心についてご紹介します。私達は、戦略的パートナー、業界専門家と共に、日本の旅 行産業の回復、展望について最新の知見やインサイトを交えながら紐解いていきます。
■開会の挨拶
公益社団法人日本観光振興協会 理事長久保田穣氏
この 2 年間、コロナによって観光需要は消失し、5 兆円以上と言われる国内インバウンド市場は蒸発、重要な経 済効果が失われたといっても過言ではありません。これは地域経済においても影響が大きく、観光が経済に大き な役割を果たしていたことを再認識できる機会となりました。東日本大震災の折には、当初東北観光は、低迷した ものの、東北復興支援のために旅行需要が喚起され、復興支援の1つとなりました。観光は、人間の好奇心を刺 激し人を動かすものですので、必ず観光需要は戻ってまいります。一方、コロナ禍で、大きく社会環境が変わり、 人々の考え方、ライフスタイルに変化が生じました。密を避ける行動の定着、気候変動問題によって地球規模で の対応も必要になってまいりました。観光の大きな目的は、地域に豊かさをもたらすことです。そのために、観光 地域がどうあるべきかを考え、観光整備、地域全体で観光消費の恵みがおよぶ社会構造作りも重要な課題です。 このような観点から、課題の見極めが必要となってきております。本セミナーがそのお役に立てることを願っており ます。
■旅行・観光事業における最新のトレンドおよびその意味合い マッキンゼー・アンド・カンパニーパートナー 久家紀子氏、スティーブ・サクソン氏
旅行需要の見込みにおいては、航空需要の回復が重要なカギとなり、2022 年 2 月時点の推計では、2023 年末 までに需要は回復すると見られています。中でも、レジャー需要が最初に回復する見込みです。日本における回 復を旅行費用の観点から見ますと、国内、インバウンド、アウトバウンドにおいては、国内のレジャーが一番に牽 引し早期に回復することを予測しています。今回の危機との単純比較は難しいものの、政治混乱、自然災害、伝 染病といった外部要因による旅行需要の影響と回復に要する時間について過去に行った調査では、回復までに 平均 15〜30 ヵ月を要するという結果もあります。
中国は、インバウンドにおいて一番重要な市場でありますが、厳しい渡航制限があり、海外旅行需要の完全な回 復には当分時間がかかる見通しです。しかしながら、海外旅行をしたいという意欲は、コロナ禍でますます高まっ ており、マッキンゼーの調査によると、2020 年 5 月に海外旅行をしたいという人の割合は 25%でしたが、2021 年 10 月には、42%まで回復しています。中でも、日本は渡航先として最も人気を集めている国の一つです。中国の 消費者の関心はコロナ禍で、「自然・アウトドア」、「文化・歴史」といった体験にあり、「観光名所訪問」や「買い物」 といった項目は、コロナ禍で低迷したことが大きな変化です。また、SNS において、動画コンテンツの充実や新し い SNS 群のカバーなど、消費者と効果的なエンゲージメントを持つための多方面・重層的なアプローチがカギとな ります。
マッキンゼーによる 2021 年 10 月の調査では、日本人消費者の収入、支出、貯蓄行動においては、パンデミック の影響が徐々に薄らいでゆく兆しが示唆されています。経済回復に対しての前向きな見通しをたてる消費者が増 加し、2-3 ヵ月以内に経済回復すると回答した「楽観的」な層は 14%でした。一方、6-12 ヵ月以上影響を受けると いう見通しの「中間層」は 65%と最も多く、他国と比較しても日本は、中間層が最も高い割合となっています。コロ ナ収束後の消費者の消費意欲において旅行は、最大の消費カテゴリーとなっており、なかでも飛行機での旅行、 アドベンチャーツアー等の旅行消費意欲が高い傾向です。世代別では、X 世代、シニア世代において旅行支出を したいという強い意向が見られます。
旅行業再開にあたっては、政府・自治体の役割と民間が共に取り組むことも効果的です。例えば、過去の危機に おいて、シンガポール、マレーシアといった国々では、旅行需要が戻らない中でも、観光業界全体のスキルアップ を図るために、バーチャルトレーニングの提供、トレーニング費用支給といったことを行っています。
また、消費者の行動変化は、コロナ禍を経て加速しています。企業は、予約プラットフォームをはじめ最新テクノロ ジーへの投資をコロナ前より積極的に行っていますが、旅行体験においても、AI を活用したパーソナライズ、バー ティカル型の予約プラットフォームなど、今までにないスタイルが一層増えてきています。衛生管理面は、柔軟性 が必要です。また、渡航規制によってバーチャルツアー、バーチャルイベントを積極的に活用し、将来につなげる動きもコロナ禍で増えました。 今後に向けて、旅行需要の回復に向けた備えや準備では、先手を打つことが重要です。いつ回復するのか先が 読めない中においても、その需要の兆しをキャッチし、その情報を集約・収集し、経営層に伝え、すぐに経営判断 を行えるような体制作りが必要です。また、新たな目を持つ消費者(新たな経験、テクノロジーの体験)に対応でき るスピード、その高速の動きを実現するための人的生産性の向上が企業の実行力として重要な要素です。
■ポストコロナの日本のインバウンド観光 独立行政法人国際観光振興機構 理事長代理 吉田 晶子氏
2013 年以降、訪日外国人数は、政府によるビザ緩和、航空ネットワークの発展によって記録的な飛躍を遂げまし た。それが 2020 年 3 月以降の水際規制の導入によって一気に減少しました。インバウンド観光の復活には、発 症国、受け入れ国両方での水際規制が大きく影響します。2022 年 3 月以降は、入国規制の緩和、ビジネスにお ける新規入国が始まったものの、訪日外国人への入国規制、航空機の到着空港の限定、1 日の入国者数制限が 続いています。インバウンド観光の主要市場諸外国においては、帰国後の隔離期間について継続して厳しい規 制のある国・地域と規制緩和している国と二極化しています。2019 年における日本への訪日外国人シェアは、東 アジア(約 7 割)、東南アジア(約 1 割)、欧米豪(約 1 割)の割合でしたが、約 7 割を占めた東アジア地域において 厳しい水際規制がとられていることに留意が必要です。
インバウンドの段階的な再開においては、1「国内観光の復活」、 2「相手国の感染状況、入国管理状況をふま えた段階的なインバウンド復活」、3「水際規制により制限されている航空ネットワーク回復」の 3 つのステップと なるでしょう。当面は、「量」ではなく、「質」を求める観光が必要と考えます。国際的な流れとしては、持続可能な 観光、サステナブル・ツーリズムが注目されています。 これには、1観光開発における商業主義の搾取から地域の環境や文化を守る、 2観光を通じた経済効果によ って地域の環境と文化、そして地域コミュニティを継承する、という 2 つの意味がありますが、これらを実現するこ とによって、滞在型、体験型の観光を通じた持続可能な地域振興が可能となります。
コロナ前のインバウンド観光を振り返ると、2019 年当時、訪日外国人が訪問していたのは、空港のある大都市圏 を起点とした、東京、大阪、京都のゴールデンルートを中心にそこから派生した場所を訪問するケースが多い傾 向でした。 ポストコロナのインバウンド観光において、地域に観光による利益をもたらすためには大都市型だけではない旅 行消費が必要です。そこで注目したいのが、アドベンチャートラベル(自然を楽しむ、自然を体験する、文化体験を 組み込んだ観光形態のこと)です。近年人気が高まり、消費額も高く期待されている旅行カテゴリーです。2023 年 には北海道で ATWS が開催され、多数の旅行会社やメディアが日本を訪問し、大会前後に日本国中プレスツア ーなどが実施される予定です。
また、質を高め消費単価を上げるという点でポストコロナのツーリズムにおいて、高付加価値旅行(ラグジュアリー トラベルマーケット)における誘客拡大が重要となります。旅行者1人あたりの消費額をあげていくために、日本政 府は、高付加価値旅行への注力も行っています。その中で、日本の高付加価値旅行市場において改善が求めら れる 5 つのポイントがあります。
1. ニーズや期待を満たす質の高い宿泊施設の整備
2. 高付加価値旅行市場の顧客が満足する観光体験と観光商品の提供
3. 柔軟で洗練されたサービス&スムーズで質の高い交通手段
4. 高付加価値旅行市場におけるエコシステムの構築
5. 高付加価値旅行先としての日本のブランディングと集中的なマーケティング
施設面においては、日本の 5 つ星ホテルは、東京、大阪、京都に集中し偏りがある一方、スペインやタイにおい ては、大都市以外の地方にもハイグレードな宿泊施設が整備されているため、地方においても高付加価値旅行 市場が成り立っています。
JNTO ロサンゼルス事務所が実施した高付加価値旅行市場に関する調査では、2 つの傾向がありました。 1. コロナ前と比べ、より長期間でよりお金をかけた旅行となる傾向
1 度の旅行で長期滞在となるので、個々の施設ではなくルート「線」やエリア「面」でのプロモーションが重要。
出入国可能な空港が限られるため、到着空港からどのようなルートで回るかを検討する必要がある。 2. コロナ後は、感染リスク軽減のため、親しい間柄(家族、友人)とのプライベート旅行が増加する傾向
基本的な感染症対策を含む安全性はもはや標準装備、よりプライベート感・エクスクルーシブ感の演出が必要で す。今後の旅の目的については、欧米旅行者は、買い物ではなく、体験、経験を重視しています。心身両面での 健康意識の高まりから、スポーツやウェルビーイングがキーワードとなり、かつ、世界の旅行者が日本に求める、 日本的なものを提供することが重要です。JNTO では、欧米での富裕旅行商談会への出展、国内でも海外から 旅行会社を招致し富裕旅行商談会の実施、テーマ別プロモーションに向けたコンテンツ収集、ツール制作・拡充、 デジタルマーケティングを活用した情報発信を行っています。また、より広く世界各国から質の高い旅行者を求め るため、高付加価値市場を念頭に 2021 年 11 月、中東のドバイ、中米のメキシコに事務所を設立し、ネットワーク を広げています。
■世界・日本の旅行トレンド・インサイト トリップアドバイザー株式会社 アカウントエグゼクティブ 中川 聡美
トリップアドバイザーは、月間 4 億 2 千万セッション、43 の国・地域において 22 の言語でサービスを展開、10 億 の口コミや意見を保有しています。トリップアドバイザーのサイトを訪れるユーザーの検索、予約、閲覧ページなど サイト上での行動をデータ化し、旅行に関するトレンドやインサイトを分析しています。このようなデータベース、ユ ーザーへのアンケート調査をもとに、世界、日本の旅行トレンド・インサイトについて、紹介します。
トリップアドバイザーのホテル予約ページを渡航意欲の指標としてとらえると、2021 年 4-5 月は、ワクチン接種 普及により、世界中で旅行意欲が加速したものの、8 月以降デルタ株、11 月以降オミクロン株の蔓延によって、旅 行意欲は季節的な要因を超えて低下しました。
世界の旅行者が検索した人気旅行先によると、日本は、2019 年 1 月に 5 位だったものの、2022 年 1 月は 12 位 となりました(トリップアドバイザーサイト国別閲覧数1より。下記参照)。これは、新型コロナウイルス感染症の感染 拡大を抑制するために日本政府によって施行された旅行制限による影響です。今後渡航制限の緩和と共に、こ の需要は徐々に戻ってくることが予測されます。
昨年12月と今年1月で比較した旅行者の来訪意欲の上昇率が高い国は、世界的には、1アイルランド、 2イ ギリス、 3ノルウェーとEU諸国が続き、アジア太平洋地域では1オーストラリア、2ニューカレドニア、3クック アイランドが続きます。(各国のホテル予約ページクリック数より)
パンデミック前の 2019 年において、訪日旅行を検討している国のトップ 10 では、アジア各国が上位を占めていま したが、2021 年には、早期に旅行規制が緩和されたアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダが上位にランクイ ンしました。日本人に人気の渡航先としては、パンデミック前と 2022 年 2 月では、1アメリカ、2中国、3タイの 上位 3 カ国は変わらず、現在はカナダ、ドイツ、オーストラリアの順位が上昇しています。2022 年 3 月に入り、渡 航制限緩和に伴い日本人の海外旅行予約件数は、前月比 75%と上昇し、今後の伸びが期待できます。
2019 年以降、アジア太平洋地域への旅行におけるブッキングウィンドウ2は増加しており、感染症や規制の状況 を考慮しながら、旅行を慎重に検討していることが読み取れます。2021 年 11 月に実施した主要マーケットにおけ る調査結果3によると 2022 年の旅行意欲は、どの国も 2019 年の実績を上回る結果となりました。旅行目的にお いては、国内旅行は多いものの、海外旅行のカテゴリー(海外休暇旅行、海外出張、海外の家族・友人訪問)にお いても大きく上昇しています。(下記図参照)
コロナ禍で旅行者の旅のスタイルも変化しています。2019 年と比較すると、様々なアクティビティ体験を行うより、 リラックスを求める傾向があることがわかりました。旅行目的では、「家族・友人訪問」、「ビーチ旅行」、「ドライブ旅 行」、「文化史跡観光」が上位ですが「アドベンチャーツーリズム」、「アウトドア」、「食体験」の人気も上昇していま す。
2022 年の旅行計画への障壁は、「旅費の高さ」、「不透明な先行き」、「旅行規制」です。旅行計画において重要 視している点は、「旅行先の感染者数」、「到着時・帰国時に隔離がないこと」、「ワクチン接種を完了していること」 が上位を占めました。世界的に感染者数が減少していても、安全・衛生対策というのは重要な要素です。 コロナ前の旅行と比較すると、旅行のキャンセル・変更の柔軟性、十分な旅行計画時間、旅行保険への加入がよ り重要となっています。旅行者の心理に現在の不安な状況が反映され、より慎重になっていることがわかります。 また、旅行計画は長期化の兆しがあることから、早めのプロモーション開始と不確定要素の不安払拭が重要にな ってきています。
■コロナ禍での観光の未来を考える~長期化するコロナとの戦いを通じて~ 公益社団法人日本観光振興協会 理事長久保田穣氏
旅行者の推移は、インバウンド、アウトバウンド共にコロナ影響を受け、日本国内における旅行消費額において も、2019 年総額 27.9 兆円から 2020 年には 11 兆円へと減少しました。しかし、日本人国内旅行消費は、日帰り 含め約 20 兆円以上の潜在ある市場規模であり、観光再開後は爆発的な需要が期待できます。訪日外国人は、 約 5 兆円の消費規模でしたが、これを産業別輸出額と比較しますと、自動車産業の輸出が半減したことと同じ経 済的損失です。これを取り戻すためには水際対策の緩和が必須です。そのために、早期に外国人観光客受け入 れができるよう、日本観光振興協会としても、他機関と連携しながら取り組んでいきたいと考えています。
コロナ禍で「密を避ける」、「テレワーク、多拠点型生活で働き方の変化」、「コロナ対策や稼働率低下に伴い、事 業者の経営圧迫」ということが生じています。分散、テクノロジーの活用、ワーケーションの普及、高付加価値ビジ ネス、旅館等の再編・再生ということがキーワードとして取り組むべき方向性であり、安心・安全対策、観光インフ ラへの整備が必要です。
これら新しい行動様式に備えた観光として、大きく 4 つあります。
1. 観光産業の強靭化:経済力による施設改善、高付加価値対応といった新しいビジネス展開 2. 観光インフラの整備・投資:多言語化対応、景観・環境整備、宿泊施設の高度化
3. 安心な観光地づくり:危機管理体制づくりや医療機関との連携、地域住民の理解形成
4. 分散化・高付加価値化:ワーケーション、アドベンチャーツーリズム、滞在型コンテンツの開発
「住んでよし、訪れてよし、受け入れてよし」の三方よしの考え方がサステナブル・ツーリズム、持続可能な観光づ くりにつながる本質です。このような観点で、各地域、各企業ができることに取り組んでいくことを期待します。
■旅が持つ変革と回復の力
日本航空株式会社 CX データマーケティング部 部長 光益彰氏
ニューノーマル下の旅行においては、渡航準備、旅行中の安全対策といったことに対して、不安要素をいかに軽 減するかが重要です。そのために、日本航空ではお客様の安全安心を第一に取り組んでいます。例えば、外部 評価システムの活用、わかりやすい安全安心の訴求、テクノロジーを活用した非接触(顔認証技術やアバターロ ボットによるお客様誘導)、新型コロナ感染症デジタル証明書アプリ VeriFLY など IT ツールといったことが挙げら れます。
IT 技術が進化する中で、旅行自体もバーチャル化という考え方もありますが、旅行のきっかけや旅行欲求を高め る効果はあるものの、デジタルでは得られないことは多く、リアルな旅の体験に優るものはありません。そのため に、旅先でどんな体験を提供できるのかが重要なポイントです。
日本航空では、旅の魅力を訴求するには、ウェブサイト、eDM、SNS から情報を発信するというプール型のマーケ ティング手法をとっています。具体的には、どんな体験ができるのかという過ごし方のモデルプランを提案し、文化、歴史、芸術、食などジャンルを細分化したコンテンツの充実化を図っています。 渡航先への動機付けを行うためには、プッシュ型マーケティングも活用しています。 講演のテーマである「旅がもつ変革と回復の力」にもあるように今後のツーリズムにおいては、変革と回復がキー ワードです。旅は、「自分の経験が豊かになる」、「旅先の社会に貢献する」、「地球環境を意識した旅行を考える」 ものです。旅行には変革の力、回復の力があります。旅行のよい体験とウェルビーイング(人生の満足度)は、5 つの項目(1明るい感情、2物事への積極的な関わり、3他者との関係、4生きる意義と自覚、5達成感)にお いて強い相関関係にあります。 サステナビリティも重要ですが、これは、環境のサステナビリティではなく、二分法的な物事捉え方からの脱却を 指します。「GDP 成長 or ウェルビーイングの成長」、「リベラルな改革 or 保守派」、「航空輸送 or 地球環境」「ゼ ロコロナ or 経済活動」、これらどちらか一方ではなく両立させていくことが重要であり、それにより旅を通して、変 革と回復の力を発揮することができます。
■談話ファイアサイド・チャット:パンデミックから何を学んだかー日本の旅行市場の復活を紐解く イーツーリズム・フロンティアズ 創業者兼 CEO ダミアン・クック氏
トリップアドバイザー株式会社 アジア太平洋地域メディアパートナーシップ統括責任者 サラ・マシュース
コロナ禍におけるアジア・太平洋地域の対応は、世界各地と比べると観光再開が遅れていることから、既に観光 再開を行っている各国から学ぶべき点は多くあります。コロナ前から起こっていた変革がコロナ禍で加速されまし た。 まずは、旅行に対する行動様式の変化です。コロナ前よりその傾向はありましたが、特にミレニアル世代が変革 を牽引し、デジタルを活用し、団体旅行から個人旅行へシフトしました。今後パッケージツアーやクルーズツアーと いったマスツーリズムには課題があるでしょう。個人旅行需要が伸びる一方で、団体旅行への魅力が薄れてしま った可能性もあります。
コロナ禍でワーケーションという働き方が注目されています。コロナ禍で仕事と休暇を組み合わせたワーケーショ ンは、バズワードとなりましたが、これは旅行需要の一時的な応急処置と考えています。ワーケーションを実施で きるのは自営業など一部に限られ、またリゾート地における需要は高い一方、都市部の観光地では難しい可能性 もあります。業務上のロジスティクスの問題もあり、小さな市場にとどまり、今後大きなマーケットシェアには発展し ないと予測します。 規制や旅行への回復に関しては、観光地で渡航規制と観光のバランスをとったところが成功しています。コロナ 初期には、マスク着用、ビュッフェの中止、PCR 検査の必要性など多くの規制がありましたが、これがずっと継続 されるものではありません。例えば、ヨルダンでは PCR 検査も現在は不要となり、規制緩和は迅速に行われてい ます。衛生基準としてガイドラインは必要ですが、それが観光需要を喚起するメッセージとなるわけではないため、 観光地は、自然、アドベンチャーなど渡航先の魅力をマーケティング活動の中で押し出す必要があります。
日本の旅行再開にあたっては、東南アジア、欧米から訪れる旅行者は、コロナ対策における意識の違いもあり、 どうバランスを取るのかが旅行業界にとっての課題となるでしょう。また、コロナ対策を含めた旅行計画を旅行会 社に全て依頼するというニーズもあるかもしれませんが、自由、開放、柔軟であることが必要です。
観光地において、何をもって成功とするか、KPI をどこに置くのかも重要な点であり、今後の KPI としては、渡航者 数ではなく、消費額、滞在日数の 2 点に注力すべきです。 トリップアドバイザーのユーザーは、サステナブルな観光に関心が高い傾向を示しており、日本の観光業界もサス テナブル・ツーリズムをより一層実践していくことが重要です。そして、個人旅行者のニーズにも応えることが必要 となります。
この 2 年間、ECサイトで購入を行ってきた人々に対して、観光地でどんな体験ができるかを訴求することは重要 です。例えば、中国人旅行者の行動に着眼すると、個人行動、ラグジュアリーという点がポイントになっています。 日本の観光業者の皆様が成功するためのヒントとしては、マーケットのセグメントを捉え、旅行者の行動を理解す ることがより重要です。マスツーリズムは、徐々に個人旅行に移行していくでしょう。旅行者の行動を掴むには、個 人的な体験を集約するプラットフォームを活用し、どんな旅行者を対象に、どんな体験を提供できる、という点をア ピールすることが肝心です。口コミ・評価をはじめユーザー・インサイトを保有するトリップアドバイザーのプラットフ ォームは、適切なマーケットへのアプローチに活用できます。
■閉会の挨拶
トリップアドバイザー株式会社 創業者 CEO ステファン・カウファー
本日は、オンラインセミナーにご参加いただき誠にありがとうございます。 トリップアドバイザーは、日本の旅行・ホスピタリティ業界と協力し、世界の旅行回復に向けた取り組みを牽引して います。また、弊社プラットフォームから得られる豊富な知見を活用し、今後の動向やプロモーションの機会を特 定することで、業界の皆様にお返しできると考えております。日本の旅行業界とのパートナーシップは、パンデミッ クから抜け出すために重要なカギとなるでしょう。 本日のオンラインセミナーは、世界中の旅行者が日本へ渡航できる日を待ちきれず、また日本の旅行者も旅行を 待ちきれないことを示していたと思います。
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トリップアドバイザーについて
世界最大の旅行プラットフォーム* トリップアドバイザーは、毎月数億もの旅行者**に利用され、最高の旅の実現を サポートしてい ます。国内外の旅行者はトリップアドバイザーのサイトやアプリにアクセスすることで、およそ 800 万件の宿泊施設、レストラン、ツアーやチケット、航空会社、クルーズについて投稿された 10 億件を超える口コミ 情報や評価、意見を参照できます。旅マエでも旅ナカでも、宿泊プランや航空券のお得な料金を比較したり、人気 のツアーやチケット、そして素敵なレストランの予約が可能です。トリップアドバイザーは頼れる旅のパートナーと して、世界 43 の国と地域、22 の言語でサービスを展開しています。
Tripadvisor, Inc.(本社:米国マサチューセッツ州ニーダム、NASDAQ:TRIP)は、トリップアドバイザーブランドサイ トやビジネスのほ か、子会社を通じて以下の旅行関連サイトの管理・運営を行っています:
www.bokun.io,www.cruisecritic.com,www.flipkey.com,www.thefork.com, www.helloreco.com, www.holidaylettings.co.uk
www.housetrip.com,www.jetsetter.com, www.niumba.com, www.seatguru.com, www.singleplatform.com, www.vacationhomerentals.comand www.viator.com
*出典: SimilarWeb, unique users de-duplicated monthly, January 2022
**出典: Tripadvisor internal log files